1.育児休業の準備と手続きのしかた~ 女性職員編 ~

はじめて育休取得者が出たとき、慌てないために
職場で初めて「育児休業を取りたい」という申し出があったとき、経営者や人事担当者が感じるのは、喜びと同時に「何をどう進めればいいのか」という戸惑いではないでしょうか。
育休制度には法律上の手続きや給付金申請、業務引継ぎの準備など、想像以上にやるべきことが多くあります。しかし、正しい知識と段取りさえ押さえておけば、育休取得者にも、職場にも安心して対応できます。
本ブログでは、女性職員が育休を取得するケースを中心に、実務で必要な対応をステップごとにわかりやすく解説していきます。
初めて、育休の取得者が出た方や、育休の対応に不備がないか確認したい方、改めて育休手続きの流れを確認しておきたい方は、ぜひ、参考にしてください。
1-1. 妊娠報告から産休に入るまで

1-1-1. 職員から妊娠の報告を受けたとき
職員から妊娠の報告を受けた際は、まずは笑顔で「おめでとうございます」と声をかけましょう。
そして、「出産から育休、職場復帰まで、会社としてしっかりサポートします。育休制度の内容や今後のスケジュールについて、時間をとって打ち合わせしましょう」と伝えることで、まずは、職員に安心感を与えましょう。
妊娠や育休の相談は、職員にとって勇気のいる一歩です。その気持ちに寄り添い、「一緒に準備を進めましょう」という姿勢を持って接したいものです。
相談を受けたら、育児休業や給付金、社会保険などの制度について個別に説明し、本人の意向を確認する必要があります。面談の場を設け、相談の体制を整えましょう。
妊娠の報告を受けてから、産休・育休を経て、復職するまでの手続きの流れ
それでは、各流れについて、詳しく解説します。

1-1-2. 産休・育休のルール説明と日程の確認
妊娠の報告を受けたら、まずは、産休・育休のルール説明から始めましょう。スケジュール表を作成すると、説明しやすくなります。
育児休業のスタート時期は出産予定日をもとに決まってきます。予定日が確認できたら、法律で決められた休業日数を基に、スケジュール表を作成してみましょう。
産休・育休の日数
| 産前休業 | 産後休業 | 育児休業 |
|---|---|---|
| 42日間 ※多胎妊娠の場合、98日間 |
56日間 | 子が1歳になるまで ※分割して2回取得可 |
最初にスケジュールを整理しておくことで、本人との相談や職場の調整、制度の説明もしやすくなります。
あらかじめ育休の全体像を「見える化」しておけば、今後の打ち合わせや引き継ぎもスムーズに行えます。
産休・育休・各種手続きのスケジュール例
| 時期 | 休業・勤務の流れ | 主な手続き |
|---|---|---|
| ① 産休前 | 面談・日程確認 業務の引継ぎ | 産休・育休の申出 必要書類・給付金の案内 |
| ② 産前休業 | 出産予定日の6週間前から (多胎妊娠は14週間前から) | ③ 産前産後休業中の社会保険料免除 ② 出産育児一時金の直接支払制度などを確認 |
| ③ 出産・産後休業 | 出産翌日から8週間 | ② 出産育児一時金の手続き ① 出産手当金の申請準備・申請 |
| ④ 育児休業 | 産後休業終了後から 原則、子が1歳になるまで | ③ 育児休業中の社会保険料免除 ④ 育児休業給付の申請 ⑤ 出生後休業支援給付の申請(該当者) |
| ⑤ 職場復帰 | 復帰前面談 勤務時間・働き方の調整 | ⑥ 育児時短就業給付の手続き(該当者) ⑦ 養育期間の年金額計算の特例の手続き(該当者) |
※手続きの流れを示した目安です。実際の申請時期・必要書類は、休業日程や各制度の要件に応じて確認してください。育児休業は、一定の要件を満たす場合、最長2歳まで延長できます。
※⑤⑥は、令和7年4月1日に創設された、給付金です。
育休のスケジュール表を作成したら、それを基に、産休、育休についてのルール説明をしましょう。
< 産休の説明例 >
出産を控えた働く女性には、「産休(さんきゅう)」という制度があります。これは、安心して出産にのぞみ、出産後も体を休められるように、法律で決められている出産前後に取るお休みのことです。
出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から取得できるのが「産前休業」です。これは会社に申し出をすることで、取ることができます。

産休、育休は何日取れるのかな?
給付金はどのくらい受けられるのだろう?
そして、出産の翌日から8週間は「産後休業」として、必ず仕事を休むことが法律で定められています。
なお、医師の許可があれば6週間以降に職場に復帰することも可能です。
< 育児休業の説明例 >
「育児休業(育休)」とは、赤ちゃんが生まれたあと、育児に専念するために仕事をお休みできる制度です。
産後休業のあと、希望すれば「子どもが1歳になるまで(条件によっては最長2歳まで)」休業を取ることができます。
ルールを説明したら、実際の育休の日程を本人の希望も聴きながら、確認しておきましょう。

1-1-3. 出産手当金などの給付金の説明
産休や育休を安心して取得してもらうには、制度の内容をわかりやすく本人に伝えることが大切です。
とくに、出産手当金や育児休業給付金などの給付金制度は本人の関心も高く、丁寧に説明したいところです。
育児休業給付と社会保険料の免除で、手取り金額は休業前の約8割になるという厚労省の試算があることを伝えて、本人の経済的な不安感をやわらげましょう。
これらの制度は、いつ、どのような手続きが必要かを時系列のスケジュールで示すと、理解しやすくなります。前掲のスケジュール表を使って、一つ一つ、本人と一緒に確認しましょう。
給付金の数はたくさんあり、説明には、時間を要します。表などにとりまとめて、資料をもとに、ポイントのみ伝えてもよいでしょう。以下に、説明例をご紹介します。
< 各種給付金の説明トーク例 > ※本人に説明するときの参考にしてください。
・出産手当金
「出産手当金(しゅっさんてあてきん)」は、産休中に会社からお給料が出ない場合に、健康保険から支給されるお金です。産前6週間(双子以上は14週間)、産後8週間のうち、会社を休んだ日数分が支給されます。
支給される金額は、【1日あたりの標準報酬日額 × 2/3】です。標準報酬日額というのは、月給の1日当たりの金額です。
たとえば、月給23万円の方の場合:
標準報酬日額:23万円 ÷ 30日 ≒ 7,666円
出産手当金:7,666円 × 2/3 ≒ 5,110円(1日あたり)
約98日間(産前休業42日+産後休業56日)休んだ場合 → 5,110円 × 98日 = 約50万円
となります。
出産手当金は、出産で仕事を休んでも、一定の生活費が支給される制度です。申請は出産後に行います。
・出産育児一時金
赤ちゃんを出産するときは、入院や分娩にかかる費用が思ったより高くて心配…という方も多いと思います。そんなときに役立つのが、「出産育児一時金(しゅっさんいくじいちじきん)」という制度です。
健康保険に加入していれば、赤ちゃん1人につき【原則50万円】が支給されます。双子なら2人分、合計100万円が支給されます。
通常、出産育児一時金は、直接、病院の入院・出産費用に充てられるケースがほとんどです。
申請は基本的に医療機関と健康保険(組合)の間で行われますが、心配なときは、病院や会社に確認してください。
・社会保険料免除手続き
産休や育休に入ると、社会保険料(健康保険と厚生年金の保険料)が免除されますので、休んでいる間にお給料が出なくても、保険料の負担はありません。
免除される期間は、産前・産後休業中(産前6週間、産後8週間)と、育児休業中(子どもが1歳になるまで)が対象です。
また、免除されても、保険料の納付期間として、扱われるので、将来の年金の計算や健康保険の保障内容には影響しないので、安心してください。
・育児休業給付金
育児休業中は、会社からお給料は出ませんが、その代わりに「育児休業給付金(いくじきゅうぎょうきゅうふきん)」という制度があります。
これは、国の雇用保険から生活支援と目的として支給される、給付金です。
受給するには条件がありますが、育休を取得する前の2年間で、「11日以上働いた月が12か月以上」あれば、パートでも給付の対象になります。
給付金の額は、育休開始から最初の6か月間は、休業前のお給料の約67%、それ以降は約50%が支給されます。
たとえば月給23万円の方なら、最初の6か月間で月約15万4,000円、その後は月約11万5,000円が目安です。
手続きは、会社を通じて行いますが、育休開始前に、必要な書類を通知します。
給付の時期は、通常、産後休業が終わって、育児休業を開始してから、およそ2~3か月後になります。
・出生後休業支援給付金
「出生後休業支援給付金(しゅっせいごきゅうぎょうしえんきゅうふきん)」は、2025年4月にスタートした新しい制度です。
出産直後の育児を、パパとママが一緒に行えるよう、応援するために創設された給付金です。
具体的には、赤ちゃんが生まれてから8週間以内に、パパとママがそれぞれ14日以上の育児休業を取得すると、最大28日分まで、給付金が追加で支給されます。
支給される金額は、「お給料の13%相当 × 休んだ日数(最大28日)」です。たとえば、パパの月給が30万円の場合、13%は約39,000円。28日間休めば、最大で約36,400円程度が支給されます(※実際の金額は条件により異なる場合があります)。
この給付金は、育児休業給付金(お給料の67%や50%)に「上乗せ」されるイメージで、合わせて最大80%(ほぼ手取り満額相当)までサポートが受けられる仕組みです。
手続きは育児休業給付金の手続きと一緒に会社の方で提出します。
男性の育休取得が増えている今、家族で育児をスタートする大きな助けとなる制度です。
会社としても、父母が一緒に育児ができるように、応援したいので、利用するかどうか、旦那様と相談してみてください。
・育児時短就業給付金
「育児時短就業給付金(いくじじたんしゅうぎょうきゅうふきん)」は、育休から復帰して「時短勤務」で働くママ・パパを応援する新しい制度です。
具体的には、子どもが2歳になるまでの間、育児と仕事の両立をしやすくするために、時短勤務をして、お給料が減った分の一部(10%相当)が国から給付金として支給されます。
たとえば、育休後に「1日6時間勤務」に変更してお給料が減った場合、その減った分の一部を補う形で給付が受けられます。支給額は月々の実際の賃金の10%が目安です。
手続きは会社を通して行います。お子さんが小さいうちは、時短勤務を推奨します。
・年金額計算の特例
将来、65歳から受け取る、年金の額は、毎月のお給料の額で決まることを知っていますか?
子育てのために時短勤務をして、お給料が下がると、「将来の年金が少なくなるのでは?」と不安になると思います。
そんな不安を持つパパ・ママを応援するために創られたのが、厚生年金の「養育期間標準報酬月額特例(よういくきかん ひょうじゅんほうしゅう げつがく とくれい)」という制度です。
これは、3歳未満の子どもを育てている間にお給料が下がっても、養育前の高かったときのお給料の金額で年金を計算してくれる特例です。
つまり、子供が3歳になるまでの間に、養育のためにフルタイムから時短勤務やパートになって、給与が下がることがあっても、将来もらえる年金額が減らないように配慮されているのです。
説明に当たっては、資料を前にすると、説明しやすいです。行政において、給付金制度の説明用リーフレットが公開されています。積極的に利用しましょう。
各種給付金手続きの概要
| 健康保険 | ① 出産手当金 | 産前産後休業中の賃金の支払いがない期間について、1日につき賃金の3分の2相当額が支給されます |
|---|---|---|
| 健康保険 | ② 出産育児一時金 | 子1人につき50万円(産科医療補償制度に未加入の医療機関等 で出産した場合は48.8万円)支給されます |
| 社会保険 | ③ 社会保険料の免除 | 産前産後休業中、育児休業•産後パパ育休中の社会保険料が免除されます (要件) •その月の末日が休業期間中である場合 •育児休業•産後パパ育休については、 休業開始日が含まれる月に14日以上休業した場合も免除対象になります •賞与の社会保険料は、1か月を超えて休業した場合のみ免除 対象になります |
| 雇用保険 | ④ 育児休業給付 | 育児休業•産後パパ育休を取得した場合 賃金の67% (180日経過後は50%)が支給されます ※支給要件あり(雇用保険に1年以上加入等) |
| 雇用保険 | ⑤ 出生後休業支援給付 | 夫婦ともに、子の出生直後の一定期間(男性は子の出生後8週 間以内、女性は産後休業後8週間以内)に14日以上の育児休 業・産後パパ育休を取得した場合 ①の育児休業給付に加え、28日間を限度に賃金の13%が支給されます ※支給要件あり(雇用保険に1年以上加入等) |
| 雇用保険 | ⑥ 育児時短就業給付 | 2歳未満の子を養育するために短時間勤務をした場合 賃金の10%が支給されます(給付と賃金の合計が短時間勤務開 始前の賃金を超えないよう調整措置あり) ※支給要件あり(雇用保険に1年以上加入等) |
| 厚生年金 | ⑦ 3歳未満の子を養育する期間の年金額計算の特例 | 3歳未満の子を養育する期間中の標準報酬月額が、子を養育する前の標準報酬月額よりも低下した場合 子を養育する前の標準報酬月額に基づく年金額を将来受け取ることができます |

1-1-4. 産休前の働き方の相談
各種給付金制度の説明ができたら、こんどは、産休に入るまでの職場での働き方について相談しましょう。
妊娠中は体調が変わりやすいため、短時間勤務や軽めの仕事への変更、通院しやすいように半日や時間単位での有給取得を認めるなど、柔軟な対応を検討したいところです。
また、母子の健康に配慮が必要な、以下の点についても、事前に話しておきましょう。
□妊産婦が保健指導・健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにする(保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保) ※男女雇用機会均等法
□妊産婦が健康診査を受け、母健連絡カード等により医師等から指導を受けた場合は、その女性従業員が受けた指導事項を守ることができるようにするために、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じる(指導事項を守ることができるようにするための措置)
※「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」※男女雇用機会均等法
□妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させる(軽易業務 への転換措置)
※労働基準法
□妊産婦を、妊娠・出産に重量物の取り扱いなどの有害な業務に就かせない(危険有害業務の就業制限)
※労働基準法
□妊産婦が請求した場合、時間外、休日労働、深夜業をさせない。また、妊産婦が請求した場合、シフト勤務において、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させない(時間外、休日労働、深夜業の 制限、変形労働時間制の適用制限) ※労働基準法
行政のチェックリストが公開されていますので、確認しておきましょう。
また、産休の開始時期や育休の取り方についても、本人の希望を聞きながら具体的に決めていきましょう。
どうしても一度出社してほしい!というような場合など、育休を分割して2回に分けて取得することも可能です。
本人とよく相談して、無理のないスケジュールを一緒に考えることがポイントです。
相談した内容は、記録に残しておくと安心です。希望や配慮点を書きとめておけば、話の食い違いや手続きの漏れも防げます。お互いにとって気持ちのよい育休準備となるよう、丁寧な話し合いと対応を心がけたいものです。
行政から記録用のフォーマットが公開されています。上手に利用しましょう。

産休に入ると、さまざまな手続きが発生します。事前に整理して、チェックリストなどを用意しておくと便利です。
産休前に、会社へ提出する書類、行政に届け出る手続きは、以下のとおりです。
産休前の主な手続き
| 手続項目 | 提出書類など | 書類の届出先 |
|---|---|---|
| 産前産後休業の申出 | 産前産後休業届出書 ※様式任意 | 会社の総務課など |
| 健保・厚生年金保険料免除 | 健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書 | 年金事務所 |
| 育休•産後パパ育休の申出 | (出生時)育児休業申出書 | 会社の総務課など |
| 育休•産後パパ育休の申出をした社員に対する取扱いの通知 | (出生時)育児休業取扱通知書 | 育休を申し出た職員へ交付 |
| 通勤定期代金返却 | 休業期間中の通勤定期代金を会社へ返却 | 会社の総務課など |
| 住民税 | 会社から市区町村窓口へ問い合わせ | 市区町村市民税課など |
| 生保等の会社払から個人払への変更 (加入者のみ) | 本人が各保険会社等へ連絡 | 各保険会社 |
特に、「産前産後休業届」は重要です。正式な産休の申し出として、口頭だけでなく、文書で提出してもらいましょう。
雇用保険、社会保険の手続きにおいては、出産予定日や、産休、育休の期間はいつからいつまでかなど、正確な日付が必要になります。本人とよく確認しましょう。
同時に、休業中の給与の取り扱いについても書面で伝えましょう。本人は、育休中の生活に不安を感じている場合も多いものです。
休業中に、国から支給される給付金の種類や金額、社会保険料の取り扱い、復帰後の処遇などについて、通知書にして、渡しましょう。
通知書の様式が公開されていますので、参考にしてください。

1-1-5. 業務の引継ぎ
産休・育休の制度やスケジュールについて職員と一通り話をしたら、次に必要なのが業務の引継ぎです。
まずは、本人が普段担当している仕事をリストアップして、「何を・どれくらいの頻度で・どの時期に」行っているかを整理しましょう。
その上で、引き継ぐべき仕事について「誰に・いつ・どのように」引き継ぐのか、無理のないスケジュールを立てます。
産休に入る直前になって、慌てることのないようにしておきたいものです。シフトの穴埋めなど人員不足に陥ることのないよう、引継ぎはなるべく早めに済ませておきましょう。
便利ツールとして、「引継ぎのリスト表」が厚労省から公開されています。

1-1-6. 休業中のサポートの相談
休業中の連絡についても、事前に確認しておくことが大切です。たとえば、職場の様子や人事異動などの情報を月に一度メールで共有するだけでも、本人の安心感につながります。
1-2. 出産前後に必要な手続きと準備

1-2-1. 産前休業の開始
産前休業は、出産前の休業で、女性職員が請求した場合は、働かせることができない期間です。通常は出産予定日の6週間前、双子など多胎妊娠の場合は、14週間前から開始します。
いよいよ産休に入る時期になったら、できれば、寄せ書きを描いたり、職場でお祝いをして、ぜひまた戻ってきてほしいという気持ちを込めて、送り出したいものです。
産休に入ると、長期間、職場を離れることになります。出産をとおして、一回り大きく成長して、帰ってくる職員は、大きな戦力となるのではないでしょうか。
出産は、人生における一大イベントです。会社として、全面的に応援していることを伝えることで、本人が安心して休業に入れるように、できる限りの配慮をしましょう。

1-2-2. 出産と産後休業
子が出生した翌日から、産後休業が開始します。
産後休業は、出産後の休業で、本人の希望にかかわらず、働かせてはいけない期間です。
ただし、産後8週間は就業禁止となりますが、6週を経過した後は、本人からの申し出があれば、医師が支障なしと認めた業務に就くことは可能とされています。
産後休業に入ったら、本人と育児休業の期間などについて、改めて相談するとよいでしょう。
育児休業は、子供が1歳になるまで、取ることができます。2回に分割して取ることもできますので、事前によく相談して、おきましょう。
また、出産後は、次のような手続きが必要になります。

| 手続項目 | 提出書類など | 書類の届出先 |
|---|---|---|
| 出生の届出 | 家族異動届 ※様式任意 | 会社の総務課など |
| 健保・厚生年金保険料免除 | 産前産後休業取得者変更(終了)届 | 年金事務所 |
| 出産育児一時金請求 | 健康保険 出産育児一時金支給申請書 | 協会けんぽなど加入する健保組合 |
| 出産育児一時金内払金支払依頼 ※医療機関等で出産育児一時金の直接支払制度を 利用し、差額の支給が生じる場合 | 健康保険 出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書 | 協会けんぽなど加入する健保組合 |
| 出産手当金請求 | 健康保険 出産手当金支給申請書 | 協会けんぽなど加入する健保組合 |
1-3. 育児休業中の手続きと復帰に向けたサポート

1-3-1. 育児休業の開始
産後休業が終わると、育児休業が始まります。
手続としては、生活保障の給付金の手続きが重要です。社会保険の出産手当金が終わり、雇用保険の育児休業給付金に切り替わります。
育児休業給付金は、初回は手続きが多めになります。申請の時期が来たら、早めに手続きできるように、事前に段取り準備を済ませておきましょう。

| 手続項目 | 提出書類など | 書類の届出先 |
|---|---|---|
| 健保・厚生年金保険料免除 | 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書 | 年金事務所 |
| 育児休業給付金 出生後休業支援給付金 |
育児休業給付受給資格確認票・出生後休業支援給付金支給申請書 | ハローワーク |
| 育児休業給付金 出生後休業支援給付金 |
育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金 /出生後休業支援給付金支給申請書 | ハローワーク |
| 育児休業給付金 出生後休業支援給付金 |
休業開始時賃金月額証明書 | ハローワーク |

1-3-2. 情報提供とコミュニケーション
育児休業に入ったら、定期的に、職場の状況について、情報提供をしましょう。
職場について、知っておきたいことや、不安に感じていることについて、連絡するとよいでしょう。
中小企業であれば、社長が直接、「変わりありませんか?育児は大変でしょう」と声をかけるのも効果的です。
コミュニケーションを円滑にしておけば、育休後のスムーズな職場復帰につながります。
子育ての困りごとをじっくり聞いたり、会社側から支援できることがないか、尋ねてみるのもよいでしょう。

1-3-3. 育休中のスキルアップ支援
育休中に、オンライン研修の受講支援など、スキルアップを促してはどうでしょうか?
育休期間は長いものです。産前・産後休業の期間も合わせれば、1年以上になります。その時間を使って、仕事の知識のブラッシュアップに役立ててもらいます。
実務者研修や認知症の研修など、資格取得のための勉強は、会社にとっても非常に有益です。
もちろん、自宅学習は、任意ですが、仕事のスキルアップに意欲的で、向上心のある人は、受講料を支給するなど、積極的に応援しましょう。

1-3-4. 復職に向けた準備 働き方の相談
育児休業の後半に入ったら、少しずつ復職に向けた準備を始めましょう。復帰直前には「復帰前面談」を行い、職場の現状や復帰後の働き方について話し合うことが大切です。
こうした相談の場を設けることで、本人の不安を和らげ、スムーズな復職につながります。
面談では、これまで通りの勤務時間で働けるか、残業は可能かなど、働き方の希望や制約を具体的に確認します。子どもの保育園の入園状況についても確認しておきましょう。もし1歳時点で入園が難しい場合には、育児休業を最長で2歳まで延長することができます。
復帰後は、仕事と育児を両立する新しい生活が始まります。特に復職直後は生活リズムの変化が大きく、不安を抱く人も少なくありません。会社としては、「仕事と育児の両立を応援する」という姿勢で相談に応じることが大切です。
また、国が公開している「育休復帰支援面談シート」を活用すると、ヒアリングすべきポイントを整理しながら話を進めることができます。面談では、職場の事情や本人の家庭状況を踏まえたうえで、最も無理のない働き方を一緒に考えましょう。社内に短時間勤務制度やシフト調整制度がある場合は、その利用も検討します。さらに、自社独自の両立支援制度があれば、その活用方法を説明しておくと安心です。
復職支援のポイントは、「ここで働き続けたい」と思える環境づくりです。会社として「できる限りサポートしたい」という姿勢を示すことで、本人の働く意欲を引き出すことができます。
お互いに信頼関係を築きながら、安心して新しい一歩を踏み出せるように準備を整えましょう。
次のような制度が利用できることを伝えましょう。
仕事と育児の両立支援制度 ※法律で義務化されています。
| 育児短時間勤務制度 | 3歳に満たない子を養育する従業員について、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮できる制度 |
|---|---|
| 所定外労働の制限 | 小学校就学前の子を養育する従業員から申出があった場合、所定外労働を免除する制度 ※育児・介護休業法 |
| 時間外労働の制限 | 小学校就学前の子を養育する従業員から申出があった場合、1か月24時間、 1年150時間を超える時間外労働を免除する制度(時間外労働の制限) ※育児・介護休業法 |
| 深夜業の制限 | 小学校就学前の子を養育する従業員から申出があった場合、深夜(午後10 時から午前5時まで) の労働を免除する制度(深夜業の制限) ※育児・介護休業法 |
| 子の看護休暇制度 | 小学校3年生修了前の子を養育する従業員から申し出があった場合、1日または時間単位で年5日(子が2人以上の場合は10日)まで取得できる |
これらはいずれも、最低限の法律ルールですが、会社側でさらに手厚いルールに見直すことも可能です。
職場復帰を後押しする福利厚生制度として、ぜひ、検討したいものです。
子供が3歳以降に利用可能な柔軟な働き方の制度についても、職員に説明しましょう。
令和7年の10月1日から、法改正が行われます。会社のイメージアップとして、働きやすい職場づくりのアピール材料として、今から周知しておきましょう。
仕事と育児の両立生活を応援する、柔軟な働き方のルール ※令和7年10月1日施行
| 柔軟な働き方を実現するための措置 | 3歳から小学校就学前の子を養育する従業員について、過半数組合又は過半 数代表者の意見を聴いた上で、以下の中から選択して2以上の制度を導入する •フレックスタイム制度又は始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ •テレワーク等(10日以上/月、時間単位で利用可能) •保育施設の設置運営、ベビーシッターの手配及び費用負担等 •就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇) の付与(10日以上/年、時間単位で取得可) •短時間勤務制度(原則1日6時間とする措置を含む) ※育児・介護休業法 |
|---|
ケアマネジャーや介護事務の方であれば、テレワークという働き方を選ぶこともできます。
産休から小学校に入るまで、会社として、働きやすい職場環境を整えていることを伝えて、安心して仕事ができることを職員にアピールしましょう。
育児休業~小学校入学までのスケジュール例
産前・産後休業 → 育児休業 → 職場復帰 → 子どもの成長に合わせた両立支援
| 制度・支援 | 出生~1歳未満 | 1歳~2歳未満 | 2歳~3歳未満 | 3歳~小学校入学前 | 小学校入学~3年生修了 |
|---|---|---|---|---|---|
| 育児休業 | 原則1歳まで | 要件を満たす場合 最長2歳まで延長 | ― | ||
| 育児短時間勤務制度 | 3歳未満まで(原則1日6時間) | ― | |||
| 柔軟な働き方を実現するための措置 | ― | 3歳~小学校入学前 会社が2つ以上の措置を導入 | ― | ||
| 所定外労働の制限(残業免除) | 小学校入学前まで | ― | |||
| 時間外労働の制限 | 小学校入学前まで | ― | |||
| 深夜業の制限 | 小学校入学前まで | ― | |||
| 子の看護等休暇 | 小学校3年生修了まで | ||||
| 育児時短就業給付 | 復職後、2歳未満の子を養育し 時短勤務をする場合(支給要件あり) | ― | |||
※オレンジ色の部分は、制度の対象となる子の年齢の目安です。休業・勤務の状況、本人の申出、労使協定等による対象外の定めなど、各制度の要件により利用可否が異なります。
※女性職員の育児休業は、通常、産後休業終了後から始まります。復職時期は本人と相談して決めます。
※3歳以降の短時間勤務は、会社が導入した柔軟な働き方の措置等によって利用できる場合があります。子の看護等休暇は、小学校入学後も3年生修了まで利用できます。
※スマートフォンでは表を左右にスクロールしてご覧ください。
制度の詳細:厚生労働省 育児休業制度特設サイト/育児休業等給付について
※育児時短就業給付は、令和7年4月1日に創設された、給付金です。
1-4. 職場復帰と復職後のサポート
育児をしながら、職場に出勤し、仕事を続けるというのは、なかなか大変なものです。ご家庭の事情にも配慮して、復職後も困ったことはないか、しっかりサポートしましょう。
仕事と育児の両立が思い通りに進んでいるか、定期的に面談の機会を持つとよいでしょう。
本人の希望を考えて、職場の状況に応じながら、勤務時間帯、業務量を確認します。
次のようなケースにおいては、特に配慮が必要となります。
・子に障害がある場合などで希望するときは、短時間勤務制度や子の看護休暇等の利用できる期間を延長する。
・ひとり親家庭の場合、子の看護休暇の付与日数に配慮する。
子育てに奮闘する、お母さん、お父さん職員を職場全体で応援する体制を整えたいところです。
復職後も、家事、育児に加えて、さらに仕事の3役をこなす、バイタリティーあふれる優秀な人材をしっかりキープしましょう。

| 手続項目 | 提出書類など | 書類の届出先 |
|---|---|---|
| 出勤(復職)の報告 | 出勤届(休暇・欠勤・休職) ※任意 | 会社の総務課など |
| 育児休業を予定より早く終了した際の届出 | 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者終了届 | 年金事務所 |
| 子が3歳になるまでの年金に関する 特例措置の申出 | 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書 | 年金事務所 |
| 標準報酬月額の改定の申出(該当者 のみ) | 健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届 | 年金事務所 |
| 育児時短就業給付金 | 育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就 業給付金支給申請書 | ハローワーク |
| 育児時短就業給付金 | 所定労働時間短縮開始時賃金証明書 | ハローワーク |
1-5. これは便利!! 育休で使えるツール集
社内における、育休制度の運用で使える「管理ツール」や「書類の様式」です。厚労省のホームページで公開されていますので、活用しましょう。
< 管理ツール >
・手続リスト
| 時期 | ✔ | 手続項目 | 提出書類など | 書類の届出先 |
|---|---|---|---|---|
| 産休前 | □ | 産前産後休業の申出 | 産前産後休業届出書 ※様式任意 | 会社の総務課など |
| 産休前 | □ | 健保・厚生年金保険料免除 | 健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書 | 年金事務所 |
| 産休前 | □ | 育休•産後パパ育休の申出 | (出生時)育児休業申出書 | 会社の総務課など |
| 産休前 | □ | 育休•産後パパ育休の申出をした社員に対する取扱いの通知 | (出生時)育児休業取扱通知書 | 育休を申し出た職員へ交付 |
| 産休前 | □ | 通勤定期代金返却 | 休業期間中の通勤定期代金を会社へ返却 | 会社の総務課など |
| 産休前 | □ | 住民税 | 会社から市区町村窓口へ問い合わせ | 市区町村市民税課など |
| 産休前 | □ | 生保等の会社払から個人払への変更 (加入者のみ) | 本人が各保険会社等へ連絡 | 各保険会社 |
| 時期 | ✔ | 手続項目 | 提出書類など | 書類の届出先 |
| 出産後 | □ | 出生の届出 | 家族異動届 ※様式任意 | 会社の総務課など |
| 出産後 | □ | 健保・厚生年金保険料免除 | 産前産後休業取得者変更(終了)届 | 年金事務所 |
| 出産後 | □ | 出産育児一時金請求 | 健康保険 出産育児一時金支給申請書 | 協会けんぽなど加入する健保組合 |
| 出産後 | □ | 出産育児一時金内払金支払依頼 ※医療機関等で出産育児一時金の直接支払制度を 利用し、差額の支給が生じる場合 | 健康保険 出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書 | 協会けんぽなど加入する健保組合 |
| 出産後 | □ | 出産手当金請求 | 健康保険 出産手当金支給申請書 | 協会けんぽなど加入する健保組合 |
| 時期 | ✔ | 手続項目 | 提出書類など | 書類の届出先 |
| 育休中 | □ | 健保・厚生年金保険料免除 | 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書 | 年金事務所 |
| 育休中 | □ | 育児休業給付金 出生後休業支援給付金 |
育児休業給付受給資格確認票・出生後休業支援給付金支給申請書 | ハローワーク |
| 育休中 | □ | 育児休業給付金 出生後休業支援給付金 |
育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金 /出生後休業支援給付金支給申請書 | ハローワーク |
| 育休中 | □ | 育児休業給付金 出生後休業支援給付金 |
休業開始時賃金月額証明書 | ハローワーク |
| 時期 | ✔ | 手続項目 | 提出書類など | 書類の届出先 |
| 復職時 | □ | 出勤(復職)の報告 | 出勤届(休暇・欠勤・休職) ※任意 | 会社の総務課など |
| 復職時 | □ | 育児休業を予定より早く終了した際の届出 | 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者終了届 | 年金事務所 |
| 復職時 | □ | 子が3歳になるまでの年金に関する 特例措置の申出 | 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書 | 年金事務所 |
| 復職時 | □ | 標準報酬月額の改定の申出(該当者 のみ) | 健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届 | 年金事務所 |
| 復職時 | □ | 育児時短就業給付金 | 育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就 業給付金支給申請書 | ハローワーク |
| 復職時 | □ | 育児時短就業給付金 | 所定労働時間短縮開始時賃金証明書 | ハローワーク |
・手続き管理表
| N0. | 主体 | 届け出•手続き等 | 実施日 | 提出時必要な外部機関の 証明(証明依頼先) | ✔ | 担当者 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 本人 | 妊娠の報告 | □ | |||
| 2 | 会社 | 個別の周知 | □ | |||
| 3 | 会社 | 意向確認 | □ | |||
| 4 | 本人・会社 | 面談(妊娠報告後) | □ | |||
| 5 | 本人 | 産前休業の申出 | □ | |||
| 6 | 本人 | 産前休業関連の資料の提出 | □ | |||
| 7 | 本人・会社 | 面談(休業2か月前) | □ | |||
| 8 | 本人 | 産前産後休業開始日 | □ | |||
| 9 | 本人 | 出産日 | □ | |||
| 10 | 本人 | 育児休業関連の資料の提出 | □ | |||
| 11 | 本人 | 育児休業の申出 | □ | |||
| 12 | 本人 | 産前産後休業終了日 | □ | |||
| 13 | 本人 | 育児休業開始日 | □ | |||
| 14 | 本人・会社 | 面談(復職1〜2か月前) | □ | |||
| 15 | 本人 | 育児休業終了日 (子が1歳に達するまで※) | □ | |||
| 16 | 本人 | 復職後の制度利用の申出 | □ | |||
| 17 | 本人 | 復職後の制度利用をする場合、関連 資料の提出 | □ | |||
| 18 | 本人・会社 | 面談(復職2か月後) | □ |
※従業員が育児休業を分割取得する場合は、欄を追加するなど修正して使用して下さい。
※「提出時必要な外部機関の証明(証明依頼先)」欄は、会社の実態に応じて必要な証明書等を記載して下さい。
< 書類の様式 >
社内で使える、育休制度の様式集が、厚労省から公開されています。ダウンロードできますので、活用しましょう。


